スカンジナビア発祥!参加型デザイン

コペンハーゲン空港のトイレにこんな仕掛けがあった。「トイレのきれいさに満足できましたか?」と問いかけ、使用者は満足度に応じた表情のボタンを押すことを促されている。こちらに来てからお店や公共施設でよくこの表情ボタンのシステムを見る。IKEAではこれを用いて店内至るところの満足度を聞いていた。

まさにユーザーの声を聞こうという姿勢の表れだ。

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デザイナーがユーザーと協力してプロダクトを設計・改善するということに関して、スカンジナビアは深い歴史をもっている。参加型デザイン(Participatory Design)と呼ばれる、デザインプロセスにデザイナーだけでなくステークホルダーやユーザー等様々な人を巻き込もう、という姿勢はスカンジナビア発祥。なんとこれは1960年代の労働組合の運動に遡り、労働条件を決める会議が上の身分の人々で行われ、労働者自らは参加できなかった状況への抗議がきっかけだったそう。労働状況の改善に労働者の声が取り入れられるようになり、これが工業に応用され、プロダクトを設計するときに積極的にユーザーをまきこむことが良しとされる風潮ができた。

この参加型デザインは、80年代から90年代にかけて発達したユーザー中心設計と呼ばれる考え方と融合し、広く着目を集めるようになったという。

 

先ほどの表情ボタンのシステムは、これらのデザインにおいて大切にされている「ユーザーの声」を取り入れようという意識の表れだ。このボタンの優れたポイントは、ユーザーにフィードバックを強いている印象を与えないところではないだろうか。

まず、シンプルに満足度を3段階で聞いているというところ。日本でフィードバックを得ようとするときは「お気づきの点があればご記入ください」等とフリースペースを用意したり、点数を付けさせたりしがちのように思う。しかしこれではユーザーは面倒臭さをおぼえ、非協力的になりがちである。3段階で選ばせるというのはユーザーの負担を最小限に抑えることができる。

そして特徴的な「表情」というインターフェース。少し和ませる雰囲気のこのイラストは、ユーザーに「押してやるか」という気持ちを抱かせる。

シンプルで可愛らしいこのシステムは、ユーザーがトイレに入り、手を洗い外に出る、その一連の体験の中に上手く溶け込んでいる。

 

ユーザーの声を聞く重要性が日本においても高まっている中で、このような参加型デザイン先進国の工夫は参考になりそうだ。